なのるなもない教員の備忘録

タイトル通りです。

【読書】音読を考える。土居正博『クラス全員のやる気が高まる! 音読指導法』

小学校国語科として数多くの本を執筆されている土居正博さんの『クラス全員のやる気が高まる! 音読指導法』を読んだ。

 

「音読」となると小学校での活動が主になるだろう。小学校国語科での音読指導は数多くの実践や本があるが、中学校となると途端に少なくなる。(一方で英語科での音読の大事さは説かれるように感じる)

それは、中学校の段階では「音読」から「黙読」へ移行しているという点が大きいと思われる。確かに、小学校に比べて、中学校の教科書に掲載されている文章の文字数は多いために、黙読の時間を多くとらないと授業が進まないというのもあるだろう。

ただ、自分の経験に基づいたものになってしまうが、中学校でも読む力が低かったり注意力が散漫だったりする子だと、黙読を任せるのが苦しいことがある。そう考えると、中学校でも音読に力を入れることは大事だと思っている。

小学校で十分に音読の経験を積んでいないと仮定して、中学校で多少でもそれを取り返すというイメージ。

 

本書に書かれている音読の指導事項は「ハキハキ」「スラスラ」「正しく」、「句読点まで一息で」などと具体的で分かりやすい。生徒に教える際にも良い音読を具体的に教えることができる。そして、教師自身が範読(教師が行う見本となる音読)をする際に、それらを体得することが可能になる。

 

中学生となると人前に出ることの恥ずかしさもあり、音読の指導は難しいと経験的に感じている。

本書の中に、土居さんが補教で他クラスの国語に入った際に音読指導をされた話が載っている。土居さんの厳しい音読指導を、子どもたちは「歯ごたえのある指導」として楽しんでくれたようであるという。

ここを読み、自分には「中学生だから恥ずかしがって読まないだろう」という先入観と生徒への甘やかしがあったと思わされた。中学生は手強いだろうが、まずは自分の中で妥協しないことが大事であると感じる。

 

本書には黙読移行の指導が記載されている。

今自分が読んでいる箇所よりも先を目で見る「目ずらしの技術」と使うことで、スピードを優先し、音読から黙読につながるのだろう。

スピード重視の音読指導から、「1分間高速読み」「15秒超高速読み」から「微音読」(唇は動かすが声には出さずに、心の中でだけ読み上げ)などのスモール・ステップを踏んでいくことで、黙読に自然と移行するようにしていた。

中学校の段階では多くの子が黙読を既に行っているだろうけども、「目ずらし」の技術を意識させることで、黙読の上達につながっていく可能性がある。

 

過去の研究を参照しながら、現場での実践知が込められた一冊。

音読指導をする際に参考になる一冊だった。