なのるなもない教員の備忘録

タイトル通りです。

【読書】土居正博式漢字指導を中学校でアレンジして実践してみた。土居正博『クラス全員が熱心に取り組む! 漢字指導法 ―学習活動アイデア&指導技術―』

 

注意点

この記事は小学校教員である土居正博先生の漢字指導法を中学校でアレンジしたらどうだったか?という記事です。

この指導法の良いところとして「児童生徒が自律的な学習者になる」などがありますが、それと共に「抜き打ちの漢字テストで高得点がとれる。それもクラス全体で」というものがあります。

最初にお伝えしますと

事情により、漢字の抜き打ちテストはやれていません。

もう一度お伝えします。

漢字の抜き打ちテストはやれていません。

非常に中途半端なところで実践が止まってしまったのは悔しさや申し訳なさがあるところですが、それも込みで実践記録として残すことは価値があると思って記します。

土居正博先生の漢字学習とは

漢字指導を「文字指導」に留めない、という考えのもと、土居先生が先行実践を元に開発された漢字指導法です。

詳しい指導方法・学習システム、なぜ漢字指導にこだわるのかといった考えや理念などは以下の本に詳細に記述されています。重複するところはありますが、共に良い本です。

 

どのように実践したか

基本的な実践は土居先生式の元に基づいています。いたずらに変えてはいけないだろうと思って、問題集も中学校の「あかねこ漢字スキル」で行いました。

「セルフチェック」など他にも相互に影響を与え合う指導があるのですが、行えたのは以下の通りです。

  • 漢字ドリル音読(一冊丸々通して音読する)
  • 漢字ドリル(1ページ毎に教師に見せる。合格したら次のページにいける。チェックは書き順や丁寧さを含めて徹底的に厳しく行う)

アレンジした部分・妥協した部分

定期テストに合わせて締切を設けた

原実践では、漢字スキルを自分のペースで進めていきます。そうすると、やる気のある子はどんどん先に進めていくようになります。なかなか進めない子は個別に声をかけたり、土居先生が一緒に付き添って取り組んでいくという形です。

私の場合、先にどんどん進めてくれるのは大歓迎なのですが、なかなか進めない子に個別に対応するというのは難しい現状があります。

1つ目の理由は、見ている生徒数が多いため。

自クラスだけ見る小学校とは違い、中学校では複数のクラスの授業をもちます。進めない子は一クラスに数人います。複数のクラスの授業を持っている場合、その人数は増えます。

2つ目の理由は、授業以外の時間が忙殺されてしまうため。

本を読むと、土居先生は休み時間や放課後の時間を利用して、進めない子の対応にあたっているようでした。中学校の場合、放課後は部活動があり、教師も生徒も自由に時間をとれません。

3つ目の理由は、定期テストがあるため。

中学校では定期テストがあり、テスト範囲として漢字を進めておく必要があります。あまりにもマイペースな進行だと、テスト範囲の漢字の学習を終えていないという場合があります。

【対応策】

テスト範囲までに終わらせなければいけない範囲を定めた

先に進めるのはどこまでも自由だけど、ここまではやっておかないとダメだよ、という範囲を決めて、生徒に予め告知しておきました。できていなければ居残りだってあるよ、とも添えて。これでお尻に火がついた生徒はいました。これでもペースが上がらない生徒にはその子達だけを集めるか、個別対応というやり方で対応しました。

漢字ドリルの進め方にこだわらない

年度初めの授業では学習の手順を丁寧に教えました。でも、実際にその通りにやっているかどうかを見てはいないです。正確に言えば、見られない。生徒人数が……

学習の手順については書籍をあたってほしいのですが、最も筆順を覚えられる行程であり、最も手間がかかるのが「書き順練習指なぞり」

中学校で習う漢字だと画数も多く、これを行うのは、漢字を覚えられると分かって上でも正直大変だよなぁと思っています。最後のページチェックのときに、枠からはみ出さずに書けていて、空書きチェックで書けていればいいかと大目に見ています。全体を見たところ、空書きやなぞり書きを何回もやっている子が多かったですね。

筆順にこだわらない

これは妥協した部分です。短時間で大勢の生徒を「捌く」という発想が頭の何処かであって、あまりこだわりませんでした(こだわれませんでした)

筆順も絶対ではないという通達が文部科学省から出ています。

またその子は、間違った筆順を「体で」覚えてしまっていると捉えると、それを中学校で改めて矯正する必要性が、小学校で行うことよりも優先度は低いと思いました。

ただ、筆順にこだわらない場合、「ペアチェック」や「全員一斉空書きチェック」をどうするのかというところがあります(今回はそこまでできませんでしたが)

手応え

定期テストの漢字の書き問題の点数は良かった

抜き打ちテストの「書き」は行えませんでしたが、「全範囲の読み」は行えました。まだ学習していない教材の漢字の読みも解答できている生徒は多かったです。

また、定期テストの漢字の点数は概ね良かったと思います(これまでの経験比)

(「テスト勉強」という下駄を履かせた状態ではありますが……)

生徒が意欲的に取り組んでいた

自分のペースで進めるということで、意欲的に取り組む生徒は授業前後の休み時間を狙ってチェックを受けに来ていました。クラスメイトとわいわい言いながら、チェックを受けている様子が印象に残っています。

個人的な課題

個別への対応

中学校だと小学校と違い、複数のクラスで授業を持つために、百数人を見なければいけません。一人ひとりに個別な対応というのは、時間と手間と共に非常に難しい。

抜き打ちテストの採点の手間

土居先生の漢字指導の良さの一つは、抜き打ちテストを行う際にその漢字を使った他の熟語を書いてもよいというところ。例えば「音ガク」が出題されたら「音楽」以外に、「楽」を遣った熟語、「楽団」「楽しい」などを書くとプラスの点数になります。

これも多くの生徒を見なければいけないという中学校の特性上、採点をする教員側としては非常に手間です。でも、とても良い試みだと思うので、こちらの工夫次第で採点もなんとかなるのではないかと思いたい……

最後に

事情があり、途中で頓挫してしまいましたが、でも再びやってみたいと思う実践でした。

漢字チェックを受けに来て、その結果に一喜一憂する生徒、つまり真剣に学習に取り組む生徒がいて、それが点数にもつながっているのなら、手間がかかろうとも教員側がまたやりたいと思わないわけないですよね。

途中で終わったからこそ、年度末にはどうなったか見たい。通年でやりたい。そう思わせてくれる実践でした。