なのるなもない教員の備忘録

タイトル通りです。

【読書】教える側の覚悟。安居總子、甲斐利恵子編著『中学校 国語授業づくりの基礎・基本 学びに向かう力を育む環境づくり』

 

中学校で国語を教える人にむけた一冊。
「シリーズ国語授業づくり」ということで他にも本が出版もされている。

Ⅰ章は安居先生が総論を、Ⅱ章は甲斐先生がQ&A方式で具体例を述べている形式で書いている。
具体例が丁寧に書かれている。実際の生徒のノートや甲斐先生が作っている手控えが例として載っており、イメージもしやすいのではないだろうか。ページ数も110ページほどと多くはない。
一方で、気軽に読める一冊だが、中身は重厚だ。

 

覚悟を問われている

国語教師としての心構えへの回答として、甲斐先生は大村はま先生の言葉を引用しつつ「子どもの姿を知る」ことをまず挙げている。

人を育てる上で大事なことは、その子供のことをよく理解しているということです。それはただ単に、思いやりのある優しい子だというような、パターン化された捉え方ではありません。自分の知らないことに出会ったときにどう感じ、その後どういうふうに行動に移そうとするのか、難しい課題があるときにどんなふうに感じ、考え、どんなふうに向き合うのか、友達と目標を共有し、取り組むときはどんなふうにコミュニケーションをとろうとするのかなど、およそパターン化できない細かい心の動きまでも捉える理解の仕方です。 ー 23ページ

国語の教師になったばかりになった方はこのような心構えで授業に臨めば、仮に日々の忙しさに忙殺されて実践できないとしても、国語教師としての力量はついているように思える。

では、国語教師として数年の経験を積んだ自分にとってはどうか。
このような一本の軸が通った実践ができているかどうかと突きつけられている気持ちになった。

 

特に私としては以下の言葉が刺さった。

国語の授業のときには教室全体を把握すると同時に、常に子供たちを一人一人「個」として見ていきたいものです。そのためには、「個」が浮かび上がってくるような学習をつくっていかなければいけません。同じ課題で同じ材料で同じ目的に向かって同じメンバーで学習していると、みんな同じように見えてきます。見えてくるのは漠然として「できる」「できない」という違いくらいです。「個」を浮かび上がらせない学習になっているのです。 ー 93ページ

授業の中で「一人ひとり」「個」を見るのが苦手だという自覚がある。ある程度一つの答えに収束させがちな発問や問いを設定し、そこに収束させるような補助発問・板書をしがちだ。一人ひとりの考えの違いを出せるような授業を実践したい。

 

「基礎・基本」とあり、読み易いが、書かれている心構えは獲得が容易いものではない。
そのような国語の奥深さを感じざるを得ない。