なのるなもない教員の備忘録

タイトル通りです。

【読書】「聞く」の循環を起こす。東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』

 

話を聞くのが上手になりたいという場合、「聞く技術 小手先編」を読むだけでも、発見や学びがある。

個人的に大事だと思ったのは、それと対になる「聞いてもらう技術」の部分。

「聞いてもらう技術 小手先編」は以下のような項目で構成されている。

日常編
1 隣の席に座ろう
2 トイレは一緒に
3 一緒に帰ろう
4 ZOOMで最後まで残ろう
5 たき火を囲もう
6 単純作業を一緒にしよう
7 悪口を言ってみよう
緊急事態編
8 早めにまわりに言っておこう
9 ワケありげな顔をしよう
10 トイレに頻繁に行こう
11 薬を飲み、健康診断の話をしよう
12 黒いマスクをしてみよう
13 遅刻して、締切を破ろう

 

一見すると、周りに心配してもらう、気にかけてもらう立ち振舞いのように見えるかもしれないが、それが大事であると筆者は言う。

「聞く技術」の本質は、「聞いてもらう技術」を使っている人を見つけ出すところにあります。「ちょっと聞いて」とは言えないけれど、聞いてもらう必要がある人が戸惑う心を滲ませている。そこに向けて、「なにかあった?」と尋ねることにこそ「聞く技術」の核心があります。
ですから、「聞いてもらう技術」と「聞く技術」はセットです。(p.148)

聞く技術と聞いてもらう技術がセットというのが大事。どちらの技術も単体で機能するのではなく、両方が合わさって機能するということだ。むしろ「聞いてもらう技術」を知った人が「聞く」とアクションを起こして、聞いてあげるということにつながるのだろう。

聞くことは循環する

「大丈夫?」
「あまり大丈夫そうには見えないんだけどな、眠れてる?」
「いつから調子悪いの?」
「なにかあった?」

「聞く技術」の本質は、「聞いてもらう技術」を使ってモジモジしている人にそう声をかけるところにあります。
「なにかあった?」と声をかけることで、話が始まります。
聞いてもらった人は少し回復し、危機を乗り越えることができるかもしれません。すると、次はその人が別のモジモジしている誰かに「なにかあった?」と声をかけることができる。
あるとき、声はあなたにかかります。
「なにかあった?」
三者として誰かの話を聞いていたはずのあなたが当事者としてモジモジしているところを見ている人がいたのです。
聞くが循環するとはこういうことです。(p.236)

誰かの話を聞いた人が、別の場面では他の人に話を聞いてもらっているというように、聞く・聞いてもらうは循環し、巡っていくと言う。

 

自分からできること(聞く・聞いてもらう)から始める

では、聞く・聞いてもらうはどちらから始めればいいのか?
筆者は自分からできるところから始めようと呼びかける。
可能なところから始めることで、「聞けない・聞いてもらえない」状態から「聞く・聞いてもらう」へ変わり、循環は起こっていくと締めている。

 

聞く・聞いてもらうことについて、できるところから始めることが第一歩だと思える一冊。